📖

ロンドンのタクシー運転手の記憶力が発達している話をどこよりも詳しくまとめ

 
おかえりなさい。れおんはーとです。
 
脳の話や記憶力の話などを調べるとちょくちょく ロンドンのタクシー運転手の話が出てきますよね。
 
ロンドンの複雑な経路を覚えるために脳を フル活用した結果、海馬が一般の人よりも 発達している、だから学習することは大切だ
 
みたいな時に使う話題として最適なのですが せっかくなのでどんな内容なのかもう少し 知りたいなと、気になっている人向けに 私の調べた限りを載せておきます。 論文の出典や収入、なぜ記憶力があるのか なども載せておくので参考にどうぞ。
 
 
【表示】目次
 
 
 

元ネタの論文

 
ユニバーシティカレッジロンドンのエレノア・マグワイア博士 による2000年の論文
Navigation-related structural change in the hippocampi of taxi drivers
 
ロンドン大学の紋章がゲーム軌跡シリーズの 遊撃士ギルドの紋章みたいでかっこいいですね。
 
 
タクシー運転手の海馬におけるナビゲーションに関連した構造変化」 (論文のタイトルの日本語訳)
 
ロンドンのタクシー運転手(ブラックキャブ)の 資格を持つ運転手の豊富なナビゲーション知識を 普通の一般人と比較した研究です。 被験者16人は平均44歳のタクシー運転手で 1.5年以上仕事をしている人を選出(1.5〜42年の範囲)。 資格をとった期間の平均は2年 (早くて10ヶ月〜最長3.5年で取得) 対象の被験者はできるだけタクシー運転手に 近い年齢と性別、右利きの人を選出していて バイアスはできるだけ排除して調べたそうです。
 
その結果、タクシー運転手の後部海馬が 有意に大きく前部海馬は小さいということが わかりました。 海馬というのは記憶力に関する脳部位で 中でも後部海馬は空間的記憶に強く関わる部位と 言われています。逆に前部海馬は情動を伴う 記憶に関わる部位と言われています。
海馬の前部と後部ではそれぞれ独立した入力回路を持つ - 東北大
 
 
しかも勤続年数によってこの海馬の体積は 相関していた(後部海馬は正、前部海馬は負)そうです。 勤続年数42年の人のデータはあまりに数字が かけ離れていたので異常値ということで 排除されたそうです。 ちなみに海馬全体の体積はどちらも変化は ないそうです。 つまりウィザードリィ風に考えると 学習で得た経験値によってレベルアップ。 貰ったステータスボーナスを空間記憶に 全振りしたのがタクシー運転手で 一般人は普通に得たボーナスを平均に振った みたいな解釈がわかりやすいでしょうか。
 
 
 
 
ということで ロンドンの特殊なタクシー運転手資格を 得るための急激な学習は、脳部位の体積を 動かすほどの大きな変化をもたらす というのがこの研究で分かったというのが 脳科学にとって大きな発見だったということですね。
 
これが神経の可塑性を示すものだ、ということで 広く知れ渡ったようです。
 
可塑性というのはプラスチック用語で熱を与えると 形を自由に変形できるという意味で 脳も柔軟に変化するという意味になります。
 
 
 

タクシー運転手の資格、ブラックキャブとは。

 
タクシー運転手になるために脳が変化するくらいの 勉強が必要って想像できないなぁ、という方が いるかと思います。そこでロンドンならではの ブラックキャブと呼ばれるタクシー運転手とは なんなのかを調べてみました。
 
 
 
ブラックキャブとは写真の自動車のことです。 この形状のタクシー=難関な試験を通った証 であり、現在20000人運転手がおり各1台を 大体所有しています。 レトロな感じとロンドンの街並みに合った 高級感も感じるおしゃれな乗り物ですよね。
 
wikipediaによれば現在はロンドンEV社で 作られており、ロンドンのような小回りの必要な 裏路地でも走れるように小型なのが特徴です。
 
 
日本でも購入は可能です。 値段は1120万円とかなりお高め。 タクシーなので仕切り板や仕切り板越しに マイクで話したり、車椅子も乗れる仕様など あるようですね。
 
 
 
 
 
 
ロンドン交通局のデータによると 現在はコロナの影響かだいぶ数が減っていて 20,786人のライセンス持ちがいるようです。 https://tfl.gov.uk/info-for/taxis-and-private-hire/licensing/licensing-information
 
 
 
ブラックキャブ vs ウーバー —— ロンドンの「抗争」の裏にある複雑な問題
こちらのサイトによると2017年のデータでは ドライバーのほとんどはイギリスの白人が占めており 伝統的なこのライセンスに誇りを持っているのが 感じられます。
またこのサイトではコロナ禍で伸びてきた ウーバーとの確執について書かれており 伝統vs革新から来る人種差別について 触れられていて興味深いです。
 
超難関のライセンスを獲得して得た職業なだけに 新参者によって自分の生活だけでなく誇りにも 影響が出るという恐怖からくる排除感情は 理解できると同時に、単純に相手を排除するだけで 解決できるのかみたいな視点を考えさせられる 内容ですね。ロンドンに興味がある方は 知っておくと良いかもしれません。
 
 
 

試験ってそんなの難しいの?

 
何度もブラックキャブのライセンスは 超難関と書いてきましたが、実際のところ そんなに難しいものなのかについて調べてみました。
ロドン交通局によりますとロンドン中を すぐに案内できるように熟知していなければ ならないとされています。
 
 
 
こちらの論文に詳しく載っていますが
London taxi drivers: A review of neurocognitive studies and an exploration of how they build their cognitive map of London
 
丸で囲まれたチャリング・クロスを起点とする 半径6マイル(10km)以内でロンドンの完全な知識を 実証する必要があります。
 
試験を受ける前にブルーブックという教本を 手渡され試験はそれをもとに出題されます。
 
チャリング・クロス
 
口頭で行うナレッジ試験においては目隠し将棋のように 試験官から出されたルートについて正確にしかも 短距離の道を言えなければいけないそうです。
 
そのためスクールに通ったり 長い時では3年以上かけてロンドン中を 地図を片手にバイクなどで走り回り 26000本ある道路をひたすら覚える作業が必要です。
gigazineさんに詳しく載っているのでみてください。
 
 
地道に覚えている様子〜ナレッジ試験の様子。
 
 
 
リンク先ではカーナビ搭載車vsロンドンタクシー運転手の 動画があり、いかに運転手の能力が高いかがわかります。
 
 
 

収入

 
気になる収入ですが、まずはこのブログをどうぞ。
 
ロンドンのタクシードライバーになる方法
 
上記の超難関な試験をクリアしてどうしても タクシー運転手になるという人は おすすめのサイトかと思います。
 
ここでは年収535万円となっていますが・・・
 
 
同サイトで紹介されているリンクから現在の 年収をチェックするとやはりコロナの影響でしょうか かなり少ないですね。
27,388ポンド(420万円)/年
 
 
平均なので効率よくお客を選択できる運転手なら もっと高額を目指せるので、ピンキリでしょうが 決して高いというわけでもなさそうです。
 
 
だからこそウーバー進出の影響はめちゃくちゃ 死活問題なのかもしれません。
 
 
 
 
 
ここまで観ていただきありがとうございました。
 
 
それでは(^^)